
●話題提供者:
特定非営利活動法人ドネルモ 代表理事
山内 泰 氏
●話題提供の内容:
ドネルモの活動内容とその中で気をつけていることを紹介された。
2035年ごろには団塊ジュニア世代が高齢になり、それを支える家族や子供が少なくなることが予想されている。この超高齢社会を見据え一人ひとりの可能性が誰かと関わることでかたちになっていく社会をつくることを目指している。
今までの社会を支えた「普通」が「普通」ではなくなる。これまでの「普通」を続けることはできないのでこれまでとは違うこれからの暮らしを作る。そこで学び合いの場づくりと担い手の育成を実践している。
ドネルモの事業の一つ「地域デザインの学校」について紹介した。住民の9割が地域活動は大切であると思っているが実際に行なっているのは3割である。地域活動が大切だと思うけれどやっていない7割をどうにかできないか?ということで取り組んでいるのが「地域デザインの学校」である。
①地域に馴染みの薄かった人々と既に活動をしている人々が、学び合う場を通じて
②「やりたいこと」や「興味あること」から地域で活動を生み出しお互いにつながりながら
③「支え合いのかたち」を豊かにしていくプロジェクト。
◆事業の目標:
3つのポイント
①地域活動に関わりの薄い層からの参加
②「活動する人」をつくる
③活動を通じて波及効果を生み出す
◆事業の実施概要
Step1:ヒアリング・掘り起こし・人集め ・対象校区周辺の様々な方にヒアリング ・地域の
方々との関係づくり ・講座の受講生募集 面白い人紹介してもらってヒアリングをする。
町の人全員に聞くわけではない。
Step2:講座の実施 ・地域活動の担い手づくり ・担い手のための場づくり
Step3:アフターフォロー ・講座終了後の活動を支援 ・地域の活動へと繋ぐ
◆事例紹介と卒業生の活動例
上長尾ハウス、ちはやとくらす、サイトリエなど。
◆成果
第1~6期で受講者は総数110名である。約7割が既存の地域活動への関わりが希薄からの参加であった、30~40代中心で10~80代までの多世代が集っている。サラリーマン、主婦、学生、自治協関係者など、属性が多様である。近隣校区から参加しており、地域と関わるきっかけを求めて参加している。受講生110人のうち、活動者数92名で、彼らが作ったイベントへの参加者数は3200名になる。地デザの学校はこの波及効果を生み出す92人を作り出している。
◆「当事者性」を引き出す手法
1.重きを置いていることは自分ゴトにすること。
・地デザのコンセプトを共有する。
・「やりたいこと」をかたちにする。
・「すっきり」よりも「もやもや」を大事に
・「共に学ぶ場」を作っていきましょう
・講座内で完結せずに外部へとつながりを拡げましょうというものである。多様な人との
関わりの中で、地域での活動は成り立つ。
2.協働学習学び合いの場を作る
・「やりたいこと」や「できること」を、人との関わりの中で引き出す。
・「何かを始めたい」と思っている人の背中を誰かが押すきっかけを作る。やりたいこと
は人と話すことや人との関わりの中で生まれる。ヴィゴツキーが言うように、
一人ではしないけどみんなでならする。
3.学習支援者になる
・受講者が「学ぶ」=学ぶ人が主体的であるためにドネルモは「学習支援」を行う。
・答えを教えるのではなくやってみようと思ってもらう。
・受講生同士の学び合いを促し、対話や振り返りでの意味づけを手伝う。 ここでは
評価を作らない。萎縮しない場を作ることが重要なのでスタッフにかなり指導する。
・自分が教えてしまうと受講者は自分なりの工夫ができなくなり、自分は相手から学
べなくなってしまう。
●感想:
山内氏の課題解決ができるのは意識が高い者だけだという発言が印象的だった。地デザの発想ではやりたいことをやる、ということが一貫してあった。以前自分の地域のつながりが希薄していることについて模擬施策を考えるプログラムに参加したことがある。働いている忙しい大人には地域に関わることはかなり難しく感じられた。超高齢社会の到来により、今の暮らしが変わってしまうことに対応するために、トライ&エラーをしながらやりたいことを地域につなげるという発想が、行政からの無理やり感がなく、納得できるものだった。
私のいたグループでは学生、民間、行政関係が2人ずつおり、それぞれの目線で意見を交換できたのが有意義だった。私が地域のつながりが大切なのは頭では理解できるがどういう意味が生まれてくるのだろう?と聞いたところ家族でも職場でもないサードプレイスが生まれることは人脈以上に大切に感じられる、と社会人の方に言われ腑に落ちた。どんな所属の人も一生懸命に暮らし方や地域のあり方を考えている姿を見ることができて感動した。
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